-私はこうして女将になりました-東横INN支配人通信~等身大の女性たち~ 第2号
ホテル経験は無くてもいい。主婦としての経験はホテルの運営に役立つはずだ──
そんな考えから東横INNは40代50代の女性、それも妻や母の顔を持つ等身大の女性たちを支配人に採用しています。
今号は主婦として2人の子どもを育て、2017年度の社員総会で東横INNの最優秀店舗賞に輝いた北條眞澄支配人に迫ってみました。
東横INNに入社したきっかけは?
きっかけは夫との別居でした。長男が5歳、次男が2歳のときにそれまで暮らしていた千葉から実家がある京都に戻り、専業主婦だった私は子供たちを養っていくために働き始めました。しかし非正規の仕事でしたので給料が十分ではありません。何か正社員の職はないだろうかと探し始めたところ、東横インが京都で支配人を募集しているとの広告が目に留まりました。
私はすぐに電話をかけました。ホテル業には昔から関心がありましたし、子育てをしている身には土日が休みだったのも好都合だったからです。
ところが電話で応対していただいた方(後で副社長だったと知りました!)は「京都での試験と面接はすでに終わりました」とおっしゃいました。落胆する私に相手はこう続けます。
「明日、東京に来られますか? もし来られるのなら最終面接に残った5人と一緒に試験と面接を受けてもらえるようにしましょう」。
私は新幹線に飛び乗りました。そして採用試験の翌日「採用になりました」との連絡をもらいました。「あなたは感じが良かったから」とおっしゃってくれたのです。まさか採用されるとは思っていなかったので驚きましたね。
入社してうれしかったこと
東横インが発行した本を1冊ずつお客様にお奨めしてご購入いただいたことがありました。1冊ずつ手渡しですから、なかなか売り切れるものではありません。まとめて購入していただけるお取引先などを探した方が早いのではとの意見もありました。でも私は、東横インのことをより深く理解していただける素晴らしい本なので、ぜひお客さまに買っていただきたいと思いました。
最後の1冊を売り切ったとき、著者である創業者からねぎらっていただいた「ご苦労さま。本当にありがとう」という言葉は今でも忘れません。別の役員の方からは「ずっと見ていましたよ。北條さんらしいやり方ですね。立派ですよ」というメールをいただきました。嬉しかったですね。以来、私は真摯にひたむきに仕事に取り組めば、必ず誰かが見ていてくれる、評価してくれると強く思うようになりました。
つらかったこと
高齢の清掃係りの女性に辞めていただいた時は本当につらかったですね。その方は視力が落ちてしまい、顔を思いきり近づけないとゴミやホコリに気づかなくなっていました。客観的に見て、清掃の仕事を続けるのは困難でした。
しかしその人は長く働いてくれた上に、一人でお孫さんを育てていました。慣れた仕事を続けられるのに越したことはありません。悩みましたが私は支配人です。店を綺麗に保ち、他のスタッフにしわ寄せがいかないようにする責任があります。
私は彼女に「もう無理ではないか」と話をしました。彼女も自分が周囲に迷惑をかけているのはわかっていて「いままでありがとうございました」と納得してくださいました。彼女が部屋から出て行った瞬間、涙が止まらなくなったのを覚えています。
東横INNで働いて自分が成長できたと思うこと
支配人の仕事を通して人を見る目、即決力、判断力、責任感が育まれたと思います。また商売のおもしろさを知り、店舗のオーナー様をはじめさまざまな企業、業種の方々と交流を持てるようになりました。さらに人前で話すのがあまり得意でなかった私が、今や大きな行事でたくさんの人たちを前にしても、堂々と話せるようになったのも私にとっては大きな成長ですね(笑)。
最優秀店舗賞が受賞できた京都四条烏丸のチームワーク力について
コツコツと地道にフロント・清掃・朝食・修理スタッフを育てあげてきたことが受賞につながったと思います。
ホテルの仕事は一人ではできません。だから私はすべてのスタッフに対していつも「ありがとう」の気持ちを持って接しています。スタッフ一人ひとりと向かい合い気持ちを伝えるようにしています。そのおかげでスタッフもまた私という人間を理解し、私の姿勢に共感し、同じ方向を歩んでくれているのだと思います。私はいろんな個性を持った人たちを集め、その手綱をしっかりと握って目標に向かうのが好きなのだと思います。人は本当にそれぞれですね。私のこれまでの経験では、男性には遠くを見据えて物事を考える力のある人が少なくないようです。一方、女性には目の前のことをいくつも同時にこなせる人が多いですね。経験豊富な年配の方は余裕があるからか落ち着いていますし、若者には新しいことを取り入れる力があります。
そんなさまざまな個性、能力を持ったスタッフたちを、創業者がよく言われた「オーケストラの指揮者」のように指揮して美しいハーモニーやソロを奏でさせる。一方でみんなが楽しく仕事ができるように風通しのよい店舗をつくりあげてきました。今回、大きな賞をいただけて、そうした努力が報われたと思います。またスタッフのみんなに恩返しができたとも思っています。
今後の展望
京都はホテルや民泊が増えており、その中で勝ち残っていくためには、他社とは違うサービスを生み出していかなければならないと感じています。18年間培ってきた経験や知識、コミュニケーション能力をさらに会社の中で活かしていくためにはどうすればいいのか、これからも常に考えていきたいです。