-私はこうして女将になりました-東横INN支配人通信~等身大の女性たち~ 第3号
ホテル経験は無くてもいい。「主婦」というキャリアが、きっとホテル運営に役立つはずだから―――
そんな考えから東横INNは40代50代の女性、それも妻や母の顔を持つ等身大の女性たちを支配人に採用しています。
今回は、2018年の社員総会で最優秀支配人賞に選ばれた、加納美佳支配人に話しを聞きました。
専業主婦から葬儀社でのパートで復職、そして東横INNの支配人へ
子どもたちとの時間を大切にしたかったので、育児に差し支えない範囲で働こうと、末っ子が小学校に入学したのを機に復職先として選んだのはセレモニーホールのパートの仕事でした。そこでは言葉遣いやお辞儀の仕方といった接遇マナーだけでなく、人の心や人間関係の機微など多くを学ばせていただきました。「鳥取に新規オープンする東横INNで支配人を募集しているよ」そう教えてくれたのもそちらの職場の方です。「そろそろ次のステップに進みたい。接客は好きだし何とかなるかな」くらいの軽い気持ちで応募しましたが、十数年ぶりにリクルートスーツに身を包んで選考会に参加してみたら、右も左も仕事ができそうな女性ばかりで圧倒されてしまいました。「これはダメだな」と早々に諦めて、筆記試験ではさっさと解答を書き終えて一番に席を立ちました。面接試験でも「経理はできますか?」「できません」「パソコンは使えますか?」「使えません」という調子です。ですから採用決定の電話をもらったときは心底、驚きました。あんなに沢山の、しかもできそうな応募者の中から、人に誇れるような学歴も職歴も資格もない私がなぜ選ばれたのか。後日、面接してくれた役員の一人に尋ねてみましたが、返ってきた回答は「加納さんが良いと思ったの。だから『どうしても加納さんがほしい』と言ったのよ」だけでした。なぜ私だったのでしょうね(笑)。ただ今回、2018年の最優秀支配人賞をいただいた時、その役員はこうおっしゃってくれました。「おめでとう。いつかこうなると信じていたわ。」
「一年は頑張れ!」の言葉を胸に
入社してからは、とにかく無我夢中でした。入社した時点で、支配人として勤務するホテルのオープンは一ヵ月先に迫っていました。本社研修に続いて他店舗でのOJTと、初めて子どもたちと離れ離れの年末年始を過ごしました。寂しかったですが、ホテルの新規オープンに立ち会えるのは刺激的で楽しく、大勢のスタッフがオープンに向けて一丸となって頑張る姿からパワーをもらいました。そしていよいよオープン、そこからは「支配人の仕事は想像以上に大変だ」と痛感する毎日でした。私を含めてオール新人の店舗ですから、オープン後しばらくは単純なミスをしたり、行き届かない点が多かったりで、ずいぶんとお客さまからお叱りを頂戴しました。立体駐車場で事故が起き、お客さまにお怪我をさせてしまったこともありました。正直言いますと、「辞めてしまおうか」という思いが頭をよぎることもありましたが、次の瞬間には「ここまで苦労を共にしてきたスタッフたちを置いて自分一人逃げ出すわけにはいかない」と思い直しました。またオープン時に西田社長(当時)からいただいた「最初の一ヵ月は大変だが、半年もすると少し落ち着き、一年経てば少しラクになる。だから一年は頑張れ!」という言葉も支えになりました。実際、日々の課題への対処にただ追われるだけだったのが、一年を過ぎる頃には先々のことまで考える余裕が出てきました。そして、それが仕事を続けていける自信にもつながっていったのです。
仕事と母との両立に悩んだ時期も
母親としての役割をきちんと果たせているか、迷い悩んだ時期もありました。スケジュールの調整をして、仕事の合間に食事をつくりに一時帰宅したり、学校行事に参加したりすることもできましたが、一方で絶対に持ち場を離れられない時もありました。出張中に子どもが病気になったり、集中治療室に入院しているのに仕事を完全に休めない時は辛かったですね。私にとって一番大事なのは子どもたちです。「この仕事を続けていくべきだろうか」と悩みました。そんな私に仕事を続けるよう励ましてくれたのは、他でもない子どもたちでした。「お母さんが頑張ってくれているのは嬉しい」そう言ってくれたのです。母の姿を見ていてくれたんですね。今ではその子どもたちも独立して親となり、「お母さん、僕たちのために一生懸命働いてくれたよね。ありがとう」なんて話してくれます。
「とにかく元気で明るく」
私が支配人として店舗で心がけているのは、とにかく明るく元気でいることです。私に元気がないとスタッフたちも元気をなくしてしまいます。それから「どんなに些細なことでも私に報告や相談をするように」と言っています。これは支配人になったばかりの新人支配人にも言っています。東横INNでは、新人支配人は本社での数日間の教育研修の後、本配属とは別の店舗に行き、先輩支配人から実務を教わります。新人支配人は覚える仕事内容の多さに圧倒され、次々に起こるトラブルに翻弄され、余裕を失ってしまいます。そんなとき、いつでも何でも相談できて、愚痴の一つも聞いてくれる先輩支配人がいたら、やはり心強いですよね。私自身、そんな先輩支配人に恵まれました。その人がいたから、今日の私があります。ですから今は、私自分がそんな先輩支配人でいなければと思っています。そして「一年経てば少しラクになる、一年は頑張って!」と声をかけています。
もっともっと良いホテルにしたい
東横INN鳥取駅南口の特徴はリピーターのお客さまが多いことです。鳥取は企業が少なく、ビジネスのお客さまを獲得するのには決して恵まれていません。新幹線が通っておらず、交通の便も良いとは言えません。ですから一回お泊りいただいたお客さまを大切にして、リピーターになっていただくことがとても大事です。そのためには、ホテルをもっとピカピカに清掃して、接客の質もいっそう上げなくてはと思います。また鳥取には数多くの観光資源があるのに鳥取砂丘を除くと知名度はまだまだです。そこで地元商工会の方々とPR企画を考えたりしています。地域と共存共栄、鳥取が盛り上がってこそ、うちのホテルも繁盛します。もっともっと観光のお客さまを鳥取に呼び込みたい、そして「鳥取に来たら東横INN、地域ナンバー1」と言われるホテルにしたい。この仕事には「これで良し」というゴールはありません。私ももっともっと頑張らなければと思っています。